2005年、チームの指揮を任された私は、かなり意気込んでいました。

本当に、根拠のない自信で満ち溢れていました。

 

はじめての新人戦。

優勝決定戦までは、順調に勝ち上がり、今年こそは、優勝してやると強い気持ちでいました。
しかし、私が思い描いていた戦いができず、一言でいうと、粉砕しました。

これは、完全に私の指導力不足に尽きます。

本当に反省しました。同時に、インターハイ予選に向けて、どこを改善して、どのように準備しなければいけないかを、ぎっしりノートにまとめたのを覚えています。

新人近畿は、久しぶりにベスト8になりました。

準々決勝は、エースが最後の最後にセンターライン付近から3Pを沈めて、逆転勝利!

このエースは、現在、Wリーグで活躍している選手です。

この選手の凄いところは、決して運動能力が高いという訳ではないのですが、理解力と判断力に長けており、何をするにも、嫌な顔を見せず、「やると決めたらやる!」と、非常に、明るく前向きな選手でした。

試合中もずーっと声を出しており、ただ、声を出すだけでなく、チームに安心感を与えてくれるような声を出してくれていました。

この年のチームは、ほとんど5人(3年生の主力は4人)で戦っていましたが、役割分担がしっかりしており、それぞれが自分の強みを磨いていました。

この時の3年生4人は、それぞれ個性があるので紹介します。

キャプテンは、151cmのセンス抜群のポイントガード、多くのことを語る人物ではありませんでしたが、膝と腰の痛みを抱えながら頑張っていました。
彼女は、1年の春と2年生のときに前十字靭帯を切り、下級生の頃は、ほとんど試合に出場していません。
彼女の素晴らしいところは、
普段は、笑顔の素敵な優しい性格なのですが、苦しい時間帯になればなるほど、目つきが変わり、集中力が増していくところです。


次に、フォワードの選手、彼女は、足が遅く、経験も全くない選手でした。高校入学した当初は、レイアップシュートも決めることができず、よく涙を流しながら練習をしていました。脚力がないので、もちろん、ディフェンスもできませんでした。
しかし、彼女の素晴らしいところは、どれだけ上手くいかなくても、どれだけ涙を流しても、絶対に逃げないところです。むしろ、歯を食いしばって戦います。
入学当初、まさか、彼女が試合にでるなんで思いもしませんでした。

最後に、エースの相棒センターです。彼女は、怒られ役でいつも怒っていたように思います。しかし、いつもリバウンドに入って味方のシュートをつないでくれる。チームにとって欠かすことのできない存在でした。

この4人を中心に、この年は戦い抜きました。

余談ですが、この年は、他にも面白いメンバーがたくさんいました。

中学校の時に、陸上部に所属しており、高校になってからバスケットをはじめた生徒が2人もいます。このうちの1人は、インターハイ予選の決勝で最後にコートにも立ちました。

また、凄く真面目な選手やお調子者の選手など個性いっぱいの学年でした。


そのようなメンバーで迎えたインターハイ予選。

決勝までは順調に駒を進めて、優勝してインターハイの切符を勝ち取りべく、迎えた朝。

試合前に、監督から「緊張するやろ!」と声をかけられました。

私は、あまり緊張した経験がないという不思議な性格で、「早く試合がしたいです!」と答えたように思います。

勝ちに飢えていた私は、決勝までの期間は、ほとんど寝ずに対戦校の映像を何度も確認し、最後の方は、映像を見なくても対戦校の試合を解説できるほど準備しました。

私が、いつも心掛けていることは、自分のできるベストを尽くすということです。

ベストを尽くしても試合に負けることはありますが、その時々で、自分が「〇〇はやっておいたほうがいい。」と、思ったことは、何があっても絶対にやります。

それこそ、睡眠を削ってでも、どれだけ大きな仕事を抱えていようと、そういうことは一切理由にしません。

それをしないと不安になりますし、もっと言えば、そういうことをやっているからこそ、緊張しないのかもしれません。


緊迫した雰囲気の中、試合がはじまりました。

この試合は、準備してきたゲームプラン通りに試合が進み、前半はリードして終えることができました。

ただ、前年も決勝で前半にリードして折り返し、後半で逆転された経験がありましたので、ハーフタイムで、その経験を踏まえて、後半も締めて戦いなさいとコートに送り出しました。

本当に、色々なことが上手く回り、4クォーターの残り2分には優勝を確信できる内容となりました。

このときに、監督の顔を見ると、すでに涙を流して喜んでおられました。
私は、その姿を見て、ジーンときたのを覚えています。

試合終了のブザーが鳴った時は、感動的でした。監督と勝利の握手を交わし選手たちと優勝の喜びに浸りました。

あの感動は、一生忘れられない瞬間です。


この勢いをそのまま続けて、近畿大会はベスト4に入りました。

ベスト4の立役者は、
入学当初、1番能力のなかった、レイアップもままならないフォワードの選手です。


彼女が、相手のエース、後にWリーグに入った選手ですが、そのスーパースターを見事に抑えてくれて勝利することができました。

今でも「よく守り抜いてくれたなー!!!」と、凄いの一言に尽きます。

彼女の姿を見て、苦しいことがあっても、下を向かないで、諦めずに、正しい努力を続けたら、結果を残すことができるということを学びました。
また、努力で積み上げたディフェンスは裏切らないということも教えてもらいました。


27歳という若造にインターハイの舞台を経験させてくれた彼女たちには感謝しかありません。